インタビュアー:寺島さん、本日はよろしくお願いします!
寺島さんは新卒でこの会社に入社されたとか伺いましたが…
寺島さん:よろしくお願いします!
そうなんですよ。新卒で入社して、気づいたら15年くらい経っていて、自分でも不思議というか。
インタビュアー:最初からこういう仕事をやろうと思っていたんですか?
寺島さん:全然そんなことなくて。正直に言うと、通いやすいという理由だけで当初は選んでました。アルミを扱っている会社だということも、うっすらわかってるくらいかな、という感じでした。
商社というものが何かも、よくわかってなかったくらいで。とにかく採用してもらえれば、それでいい、という感じでした。
インタビュアー:それは意外でした…
寺島さん:入社動機がシンプルだったからこそ、中に入ってから初めて会社のことを知っていったんです。
商社って、物を右から左に流すだけっていうイメージを持っている方もいると思うんですが、実際は「この材料を使うならこういう加工ができます」とか「今この素材は市場で動きがあります」とか、知識があって初めてできる会話がたくさんあって。
そういうことを、入ってから少しずつ知っていきました。
インタビュアー:入社当初はどんな感じでしたか?
寺島さん:本当にポンコツだったと思います。
とにかく仕事できないし、暗いし、電話対応もできないし。
なんだこいつ、みたいな感じのやつだったと思います。
インタビュアー:今の寺島さんからは想像できないんですが…
寺島さん:自分でも信じられないですよ、今思うと。
電話が鳴るとドキドキして、取るのが怖かったんですよ。何を聞かれるかわからないし、答えられなかったらどうしよう、って。だから他の人が出るのを待ってる、みたいな。
インタビュアー:それは知識がなくて不安、ということですか?
寺島さん:知識がないというのもあったんですけど、それより自信がなかったということだと思います。声も小さいし、表情もあんまり出ない。
仕事がわからないのも相まって、周りに対してどんどん引っ込んでいくような状態で。
暗くなろうとしていたわけじゃなくて、そうなってしまっていた、という感じです。
インタビュアー:今と全然違いますね。何かきっかけだったんですか?
寺島さん:ちゃんと言葉をかけてくれた人がいたんですよ。
そのまま放っておかれていたら、気づかなかったかもしれない。
■当時の代表に言われた言葉が、変えた
インタビュアー:どんな言葉だったんでしょう?
寺島さん:当時いた代表に「君の取り柄は何か分かるか」と言われたんですよ。
「何だろう?」って思ってたら、「若さだよ」って。
「若い時に何でもしないと。失敗したら上司が謝ってくれる。それが今だけだから」と言われて。
インタビュアー:結構ストレートな言葉ですね…
寺島さん:驚きました、最初は。今の時代だともしかしたら問題になっていたかもしれないですよね(笑)
「アナウンサーみたいにハキハキ喋れ」とも言われたし、地味だとも言われました。
もちろん人格批判などではなく、仕事をする上でのアドバイスだとはわかっていました。そして、はっきり言ってくれるからこそ「ここを変えればいいんだ」とわかったんです。
インタビュアー:しっかりと言ってもらえることが、逆に良かったんですか?
寺島さん:そうなんですよ。「あなたはここが足りない・直しなさい」ってはっきり言ってもらえると、そこを変えようとできる。
漠然と自信がないままでいるより、「これを直せ」と言われる方が、動けるんですよね。
自分では気づけないことを言ってくれた人がいたというのは、今思うとすごく大きかったです。
今のご時世、コンプライアンスなどで、なかなか上司が部下に対してストレートに言うことが億劫になる環境ですが、愛のある指摘というのは本当にその人のためになると思うんです。
インタビュアー:「失敗したら上司が謝ってくれる」という言葉も面白いですね。
寺島さん:そうなんですよ。若い時だけだから、今のうちに動きなさい、ということで。
その言葉があったから、知らないことにも「やってみよう」と思えた部分がありました。
インタビュアー:実際に変わっていったんですか?
寺島さん:電話も自分から取るようにしてみたし、話し方を少し意識してみたし。最初はぎこちなかったと思いますよ。でもやり続けているうちに、少しずつ形になっていく感覚があって。言われて意識して繰り返すことで変わるんだなというのは、体感として持っています。
インタビュアー:その代表への感謝が今もあるんですね。
寺島さん:ありますね。あの時あの言葉がなかったら今の私はいないと思います。若い時に失敗できる場所、失敗を引き受けてくれる上司がいたというのは、今でも大事なことだったと感じています。
■図面が読めない。だから、全部聞いた
インタビュアー:今はどういったお仕事を担当されているんですか?
寺島さん:一応名目は営業アシスタントなんですが、顧客からの問い合わせ対応をしたり、見積もりの回答をしたり、進捗管理もしたりなど、色々と担当しています。
インタビュアー:営業アシスタントではありますが、機械加工の知識なども必要になりそうですよね。
寺島さん:はい、必要になってきます。私、文系なんです。
最初は図面が読めない状態で、機械加工の仕事に関わることになって。
本当に何がなんだかわからなかったです。
インタビュアー:それは大変でしたね…
寺島さん:すごく困りましたよ。
お客さんから図面が送られてきても、それが何を指示しているのかわからない。寸法の単位もわからないし、材料の指定もわからない。
でも見積もりを出さないといけない。
そのギャップが最初はきつかったですね。
インタビュアー:どうやって乗り越えたんでしょう?
寺島さん:協力会社の方に直接教えてもらいました。
わからないことはそのまま「教えてください」と聞いて。
技術的な細かいことは「図面に書き込んでもらえますか」とお願いし続けました。
インタビュアー:何度も聞くのは、気が引けることもありませんでしたか?
寺島さん:最初はとても気を遣いました。
でも、知ったふりをしてわからないまま進めても、後でもっと大変なことになる。だから、わからないことはその場で確認する、という習慣をつけていきました。
最初のうちは「またこいつが来た」と思われてたかもしれないですけど、聞き続けることで「この人は知ろうとしているんだ」という信頼が積み重なっていく感覚がありました。
そこで教えてもらったことが今の自分の土台になっています。
■曖昧に答えない。それがこの仕事の哲学
インタビュアー:仕事で大切にしていることはありますか?
寺島さん:一つだけ、絶対に守っていることがあって。
曖昧な返事は絶対にしない、ということです。
インタビュアー:なぜ大切にされているんですか?
寺島さん:わからないのに「たぶんそうだと思います」と言って、後で間違いが出ると、お客さんにも協力会社にも迷惑がかかる。
少人数の商社でそれをやったら、信頼がなくなるんです。
一度なくなった信頼は取り戻せない。
インタビュアー:小さい会社だからこそ、一つの判断ミスが大きく響く、ということですか?
寺島さん:そうです。大きな会社なら誰かがカバーできるかもしれないけど、うちは人数が少ないから、私が答えたことがそのまま会社の答えになる。
だからわからない時は「確認します」しか言わないようにしてきました。
インタビュアー:「確認します」と言い続けることで、顧客は信頼してくれるんですか?
寺島さん:してくれると思っています。「わかりません」で終わらせるのと「確認します」は全然違う。確認して戻ってくるというのは、そこに責任があるということで。
曖昧にごまかすより、「今確認します」と言えた方が、相手は安心できる、と考えています。
インタビュアー:その考え方はどこから来てるんですか?
寺島さん:私が実際に同じような対応をされた時に困ったという体験があったからです。
そういう対応を受けた後に「あ、絶対自分こんなことしちゃダメだな」と思って、そこから反面教師として学んでいった感じです。
インタビュアー:自分がされた経験が、自分のやり方を決めたんですね。
寺島さん:そうです。「この人に電話したくないな」と思う相手の特徴が、そのまま「自分がやってはいけないこと」になる。逆に「この人に聞けばわかる」と思われたい。それが軸になっていきましたね。
■私なりの商社の流儀
インタビュアー:なぜそこまで電話にこだわるんですか?
寺島さん:基本的に外に出ない役割を担っているので、顔を合わせて関係を作るのがなかなか難しいんですよ。
だとすると、声しか武器がない。
声だけで「この人から買いたい」と思ってもらわないといけない。そう考えると、電話の1本1本が実は大切な仕事なんです。
インタビュアー:なるほど、電話1本も大切な仕事ですか。
寺島さん:はい。対面だったら表情とか身振りとかで補えるものが、電話だと全部声に乗ってくる。電話した時に暗い声で出られると、その後の話もしにくくなるじゃないですか。
質問したくても、しにくい雰囲気になってしまう。
逆に明るく元気な対応をしてもらえると、なんか話しやすいな、また連絡しようかなって思えることもある。だからトーンを意識して、聞き返しやすい雰囲気を作ることを続けています。
インタビュアー:電話での関係地づくり、かなり難しそうです。
寺島さん:「寺島さんだから、この会社を使おうかな」と思ってもらえるようにしなきゃいけない、というのを目標にしています。
かなり大袈裟に言えば、お客様は別にうちの会社からでなくても、買おうと思えば買うことができる。
だからこそ、「あの人から・あの会社から買いたい」という気持ちのみが違いになってくる。そこを積み上げられているかどうかが、勝負なわけです。
その違いを生み出すために必要なのが、1本1本の電話だったりすると思っているのです。
インタビュアー:商社という仕事の本質のような気がしますね。
寺島さん:商社って、物を右から左に動かすだけだと思われることがあるんですよ。でも実際は、その間に「この材料はこういう特性があって、この用途に向いています」とか、「今この材料が市場で動いています」とか、知識と判断が介在している。
それが、人を乗せているということだと思っていて。物だけじゃなくて、人が一緒についてくる。
それがあるから選んでもらえる、そう思っています。
インタビュアー:物だけを売るのではなく、人も一緒についてくる。とても深いですね。
人を乗せるというのは具体的にどういうことなんでしょうか。
寺島さん:顧客が何を求めているかを読んで、それに合った情報や判断を一緒に渡せる人間がいる、ということです。
納期を最優先にしている顧客、材料の特性を知りたい顧客、細かい加工の相談をしたい顧客、それぞれ求めていることが違う。
そこをちゃんと見て動けるかどうかが、単なる仲介との差になると思っています。
電話1本でもそれをやっている、というのが私なりの商社の流儀というか。
インタビュアー:私なりの商社の流儀ですね。
寺島さん:私たちのような中小規模の商社は、大手みたいにネームバリューで選んでもらえるわけじゃないので、従業員一人ひとりが個人として信頼を積み重ねていくしかありません。
「あの人に頼んだら解決できた」という体験が積み重なって、次もそこに連絡する、という流れができる。
そうすることが、我々の勝ち筋であり、我々のすべきことだと思っています。
インタビュアー:大手商社ではないからこその戦い方ですね。
寺島さん:私が電話一本で対応している取引先は、地域の工場だったり、小さい加工業者さんだったりします。そこが動くということは、その地域の製造業が動いているということでもある。
私の判断一つで、向こうの工場の稼働が変わることだってあるかもしれない。
インタビュアー:商社が地域の産業をつないでいる、という感覚ですか。
寺島さん:そうです。富山の工場が持っている技術を、東京の顧客が必要としている、ということって実際に起きていて。
そこをつなぐのが商社の仕事だと思うんですね。
地域に眠っている技術や資源が、必要な場所に届くまでのルートに、自分がいる。それをちゃんとつなぐことが、地域の仕事を守ることでもある。
ホクセイグループとして「地域の価値を世界へつなぐ」と言葉にしていますけど、自分の日常の仕事がその一部なんだということは、最近改めて感じるようになりました。
インタビュアー:日常の積み重ねが、そういうところにつながっているわけですね。
寺島さん:大きなことを言おうとしているわけじゃなくて、電話一本をちゃんとやることが、取引先の工場を動かして、地域の産業をつないでいる。
その連鎖の中に自分がいる、という実感があるんですよね。
それがわかってからは、仕事が少し違って見えるようになった気がします。
インタビュアー:寺島さんなりの商社の流儀を聞けた気がします!本日はありがとうございました!