クルーの航海日記 Vol.6
語り手:杉村 和葉(ホクセイグループ プロダクト部門)
聞き手:インタビュアー
オレゴンのフルーツが、日本のクラフトビールになるまで
■面白そうな商社が高岡にある
インタビュアー: 杉村さん、本日はよろしくお願いします!今日はOTAVA Hokusei からの参加とのことですが、まずこのオフィスについて教えてもらえますか?
杉村さん: よろしくお願いします!
OTAVA Hokuseiは、ホクセイグループが富山県高岡市に設けたオフィスで、2021年にできた比較的新しい拠点です。
「OTAVA(オタヴァ)」はフィンランド語で「北斗七星」という意味で、ホクセイ(北星)にちなんだ名前なんです!
インタビュアー: フィンランド語なんですね!どんな場所ですか?
杉村さん: 木を基調にした落ち着いた雰囲気の空間で、図書館やカフェのような感じもあって、いわゆる普通のオフィスとはちょっと違います。
従業員は気分を変えたい時などはここを使用していて、リモートワークのような形で働いたりもしています。
私自身もここに来ると少し新鮮な気持ちになりますね。
インタビュアー: 杉村さんはホクセイに入る前は何をされていたんですか?
杉村さん: 前職は保険会社に勤めていました。5,000人ぐらいの会社だったんですが、組織の体制もしっかりしていて、いい会社でした。
インタビュアー: 保険会社ではどんな仕事をされていましたか?
杉村さん: 営業アシスタントを10年程、その後代理店営業もしていました。
代理店が保険を販売できるように、コンプライアンス管理も含めて全般をサポートする仕事でした。
自分が直接保険を売るわけではなく、あくまで代理店の方々に動いてもらうしかない。自分でハンドリングが効かないところも多かったので、そこは結構大変でした。
インタビュアー: そこからコロナや家庭の事情もあり、転職を考え、ホクセイに入られたんですよね。それまでにホクセイのことは知っていましたか?
杉村さん: 求人を見る前に、一度調べたことがあったんですよ。自分は何をしていきたいかなと考えた時に、商社とか海外が絡む仕事を見ていて、「面白そうな商社が高岡にある」ぐらいの感覚で知っていました。
富山や高岡で商社や海外事業をやっている会社は珍しいんです。
地方だと働く会社の選択肢が限られていますから。働く会社の選択肢自体がそもそも限られている中で、ホクセイに出会えたのは運が良かったと思います。
■暇にしているわけにもいかない
インタビュアー: 入社当初はOTAVAの管理人だったそうですね。
杉村さん: はい、OTAVAの専属管理人としての採用でした。もともとOTAVAはソーシャルビジネスやソーシャルデザインの拠点にしようという構想はありましたが、具体的にどのように活用していくかが完全に決まっていない状態からのスタートでした。
だからこそ、社員全員でブレインストーミング等を行いながら、手探りで少しずつ形を作ってきたという経緯があります。現在もまだ模索の過程ではありますが、今後は新しい働き方やライフスタイルの発信拠点となることも目指して、さらにアップデートを続けていく予定です。
インタビュアー: 今はどういった仕事をされているんですか?
杉村さん: OTAVAの管理業務と、主に綿さんのアシスタントとしてバックオフィス業務全般を担当しています。
今はオレゴン州ポートランドにある日本庭園に関する事業とクラフトビール用のピューレ事業の二つが主な事業で、その両方を横断して動いています。
注文書の作成、仕入先とのやりとり、在庫管理、出荷の依頼、輸出入の事務手続きなどを対応しています。
⇩綿さんのフォーカスした記事はこちら
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インタビュアー: 海外と関わる仕事をされているのは楽しそうですね。
杉村さん: はい、とても楽しいですし、すごく嬉しいところです。
昔から海外旅行が好きで結構行っていたんです。英語は話せないんですけど、海外に関わることができているのは、ラッキーだなと思っています。
■クラフトビールの盛り上がりをより広めたい
インタビュアー: フルーツピューレ事業について詳しく教えてください。
杉村さん: ホクセイグループは、アメリカのオレゴン州にあるOregon Fruit Companyというフルーツ加工メーカーのピューレを、日本国内のクラフトビール醸造所に供給しています。
2016年にオレゴン州ポートランドに設立したグループ会社のHokusei North America Corporationが輸入の窓口になっていて、そこから日本に届く流れです。
インタビュアー:扱っているピューレはどんな感じなんですか?
杉村さん: オレゴン州のフルーツピューレになりまして、ブラックベリー、ラズベリー、ブルーベリー、チェリー、クランベリーなど、約20種類のフルーツピューレを扱ってます。
オレゴン州は豊かな土壌と気候に恵まれ、世界でもトップクラス品質のベリー類が育つ土地として知られています。
砂糖も保存料も添加物も使わず、フルーツ素材そのままの風味が活きているピューレです。
インタビュアー: 日本ではあまり栽培されていないフルーツが多いんですね。
杉村さん: そこがポイントです。
ブラックベリーやラズベリー、ボイセンベリーといった果実は、日本では大規模な商業栽培がほとんどされていません。
日本の農家が育てているいちごやみかんと競合するのではなく、日本にはない果実を届けている。
だから国内の第一次産業を圧迫しない形で、新しい選択肢を醸造所に提供できているんです。
インタビュアー: そのピューレを、日本のクラフトビール醸造所が使うわけですね。
そもそもクラフトビールにフルーツピューレって、どう使われるんですか?
杉村さん: ビールは基本的に「水、ホップ、モルト、酵母」の4つがあれば作れるんです。全国のクラフトビール醸造所では、そうしたベーシックなビールだけでなく、スパイスやハーブ、コーヒー豆などの ”副原料” を使用したオリジナリティ溢れるクラフトビールも作られています。
味わいにバリエーションを生み出すために、私たちのフルーツピューレも “副原料” のひとつとして、醸造工程において使用されているんですよ。
例えば冬はスタウトという黒くて重めのビールが好まれるんですけど、そこにチェリーやブラックベリーのピューレを入れたりとか。
季節によって求められるフレーバーも変わります。
インタビュアー: ブルワリーの方たちはどんなふうにピューレを選ぶんですか?
杉村さん: ブルワリーの方々は皆さん真の職人さんなので、「このフルーツピューレを使いたい」と、ご自身の中で明確なビジョンを持ってオーダーされることがほとんどです。
ビール造りは本当に奥が深くて、例えば「赤色」のピューレを使ったのに、出来上がったビールは「黄色」っぽくなったりする。投入する分量やタイミング、酵母との相性によって、全然違う結果になったりもするんです。まさに正解も間違いもない、無限の世界なんですよね。
インタビュアー: 杉村さんが入社した時から、この事業はあったんですか?
杉村さん: はい。ピューレの販売はされていました。でもお客さんはまだ少なくて、手探り状態でした。
そこから地道に地道に綿さんとともにクラフトビール自体についても勉強しながら、事業を進めていきました。
インタビュアー: 転機はどこにあったんですか。
杉村さん: そもそも、うちは在庫を持って売るという考え方の会社ではなかったんです。商社なので。でも在庫なしでは売れないという現場の状況を、綿さんが丁寧に説得をしていきました。
そうして、昨年から倉庫を借りて、在庫を大きく持つようになりました。
インタビュアー: 在庫を持つことで変化はありましたか。
杉村さん: それまでは、問い合わせが来ても「ありません」と答えざるを得ないことが結構あったんです。今はラインナップを揃えて在庫しているので、希望の味にほぼ即答できるようになりました。
ブルワリーさんからの見方も少しずつ変わってきたのかなと信じたいですね。
インタビュアー: 倉庫はどういう環境ですか。
杉村さん: 関西に倉庫を借りていて、温度管理がしっかりしている場所です。冷蔵が必要なものと常温で大丈夫なものを分けて保管しています。
ピューレは製造から18ヶ月ぐらいの賞味期限がありますが、物によっては冷蔵環境じゃないともっと短くなるものもあるので、両方に対応できる設備が必要でした。
インタビュアー: ホクセイならではの強みはどこにありますか。
杉村さん: 他の企業は一斗缶に入ったフルーツピューレだったりしますが、弊社は無菌パックで提供しています。
ブルワリーにとっては無菌であることが大事だと聞いています。ビールは発酵の工程があるので、余計な菌が入ると全体に影響が出る。
無菌パックなら開封してタンクに投入するだけで使えますし、常温で保管できるので冷蔵スペースが限られた醸造所でも扱いやすい。
そうしたメリットがあります。
インタビュアー: 今年の2月には横浜のJAPAN BREWERS CUPにも出展されてましたよね。実は私も顔を出させていただきましたが…
杉村さん: はい!JAPAN BREWERS CUPとJAPAN BREW EXPOという、日本最大級のクラフトビールの展示会が横浜の大さん橋ホールであって、ホクセイグループとしてブースを出しました。
私と山口さんの二人でブースに立って、全国から来たブルワーの方たちにピューレの説明をしたんです。
インタビュアー: 実際にブルワーの方と話してみて、どんな反応でしたか?
杉村さん: 「このピューレを使えばこういうビールが造れそう」「今年はこのフルーツを試してみたかった」という話が次々と出てきて。
アルミの商社がなぜビールの祭典にいるのかと不思議がられることもあるんですけど、話し始めると皆さん前のめりになってくれるんですよね。
サンプルを手に取って、色や香りを確かめながら、自分のビールのレシピと照らし合わせている。その姿を見ると、この商材を届けている意味があるなと感じます。
インタビュアー: 来年のイベント出展も決まっているそうですね!
杉村さん: はい!綿さん含め、来年のイベントも出ようと話しており、やる気満々です!
クラフトビール業界の皆様が、様々なクラフトビール造りに挑戦されている姿を肌で感じられるからこそ、私たちもその情熱に全力でお応えしたい。
そうして生まれたクラフトビールの素晴らしさをより多くの方々に届けたいという想いで、日々動いています。
■アメリカから日本へ。日本からアメリカへ
インタビュアー: もう一つの日本庭園の事業についても教えてください。
杉村さん: 日本の伝統工芸品などを海外に届ける事業です。オレゴン州ポートランドにあるPortland Japanese Gardenへの商品輸出も行っています。
インタビュアー: フルーツピューレは「アメリカから日本へ」、ガーデン事業は「日本からアメリカへ」。
太平洋を挟んだ双方向の事業ですね。
杉村さん: そうなんですよ。日本庭園への輸出をやっていることも、この規模感でやっていること自体も、なかなかできることじゃないと思います。
インタビュアー: ホクセイの強みはどこにあると思いますか。
杉村さん: 小回りが効くというところだと思っています。社長や営業の判断でパッと動ける柔軟さがあります。
インタビュアー: そんな中で杉村さんが大切にされていることはなんですか。
杉村さん: 全社最適という視点ですかね。全体を見てバランスを取ることを、前職の頃から意識しています。
今はちょっと特殊な立場にいるので俯瞰して見えるところがあります。
ここが、と思うところは様子を見ながら声をかけたり、バランスを取ることが自分の役割だと思っています。
インタビュアー: では最後に杉村さんの直近の目標を教えてください。
杉村さん: ピューレ事業をいかに大きくできるかというところに注力しています。全国に一件でも多くお客さんを増やしていく。
綿さんと数年前に「日本全国どの都道府県にも、必ず1件以上のお客様を作る」という目標を立てました。
今はその目標をクリアするために、必死に弊社が扱っているピューレの良さを届けています。
少しずつ各地域にお客様ができていく感覚があるのは嬉しいですね。
インタビュアー: 杉村さん、本日はありがとうございました!